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2013年2月7日木曜日

地球近傍小惑星「2012DA14」は地球にぶつかるのか?


こんな商売をしていると、親しい人からサイエンス系のニュースについて解説を求められることが多い。
まあ科学といっても多岐にわたるし、詳細な説明はその道のプロに譲るとして、NASAが公開した資料などから今回のニュースのポイントを簡単に整理しておきたいと思う。

■今回の小惑星の何が特別なのか?

小惑星の軌道が特別。各国の宇宙機関が現在の体制で観測を始めて以来、最も地球に近いところまで接近する小惑星となり、2013年2月16日午前4時23分(日本時間)の最接近時には地表から27150キロ、つまり、地表から約36000キロの軌道上を周回している気象衛星や通信衛星よりもかなり地球に近づく。

■小惑星「2012DA14」ってどんな小惑星なのか?

現在のデータでは、長さ約45~46メートル、質量約13万トンと推定されている。
岩の塊なので質量こそ大きいが、小惑星としては小ぶりなもので、いま話題のボーイング787の全長、翼長と比較していずれもワンサイズは小さい。
小惑星探査機「はやぶさ」が目指した「イトカワ」(直径330メートル)などと比べれば大人と子供以上の差がある。
1908年にロシアのツングースカに落下し地表に着く前に完全に蒸発したと言われる小惑星よりわずかに大きい程度なので、430万キロも離れた場所から発見できたことの方が驚き。
軌道速度は時速に直して約28000キロ、地球との相対速度は秒速7.82キロ。

■地上から肉眼で見えるのか?

今回の小惑星、明るさは最も明るい時で7等星~8等星程度なので、肉眼での観測は難しい。
アマチュアでも口径20センチ程度の望遠鏡であれば観測は十分可能。双眼鏡でも三脚に取り付けた大型のものならなんとか見えるかも。
ただ、夜空をかなり速い速度で移動するのでそもそも望遠鏡の視野に入れるほうが難しいかもしれない。

■小惑星は万が一にでも地球にぶつかる可能性はないのか?

これは今のところ「ない」と断言していいと思う。
地球の直近で小惑星「2012DA14」が突然分裂したりすれば新しい要素が生まれるのでその限りではないが、現時点で石質の小惑星だろうと予想されているのでその可能性は比較的少ない。
当然地球の重力の影響を受けて小惑星の軌道は大きく変わるが、それをふまえても今回衝突という事態はないと考えられている。
ただし、静止軌道より内側を周回してる軍事衛星(偵察衛星など含む)などに接触する可能性はゼロではない。

■仮にぶつかったら地球はどうなる?

だからぶつからないと言っているのに(苦笑)
そんな訳であくまで仮定の話になるが、たとえば海に落ちたら小規模な津波が発生する。その高さは近くであれば数十メートルにはなるだろう。
加えて小惑星の本体は恐らく大気圏で爆散すると思われるが、地表近くで爆散した場合、その衝撃波は周囲1200平方キロメートル(ツングースカで立木などがなぎ倒された範囲の実測)+αに何らかの影響をおよぼすだろうと考えられている。
日本の都市で言うと札幌市よりわずかに広い範囲。ただし日本の場合、山に遮られて実際の被害面積はもっと小さくなるだろう。東京のどまんなかに落ちたとして、せいぜい23区と周辺市町村が被害を受ける(更地になる)程度のものである
ちなみに、今回のクラスの隕石が衝突した際に開放されるエネルギーは約2.5メガトン、これはかなり大雑把な計算になるが、東日本大震災の本震で開放されたエネルギーのおおむね1/200程度のエネルギーということになる。
ちなみに、「2012DA14」は6500万年前にメキシコ、ユカタン半島に落下し恐竜絶滅の遠因を作ったといわれる隕石の1/220以下の大きさしかない。
もちろん大災害には違いないし自分の生きているうちに落ちて欲しいとは死んでも思わないが、今回クラスの小惑星の衝突を直接の原因とした人類滅亡とかは間違ってもないだろう。