たまたま実家にタブレット端末を送る事になり、近所の郵便局に持ち込んだ所、
「航空輸送できませんので陸路になります。通常より日数かかりますけどよろしいですか?」
と訊かれた。ボーイング787の緊急着陸などもあり、ああそうか厳しくなっているんだなあと漠然と理解して「はい、お願いします」と答えたのだけど、本当にゆうパック(航空貨物)として送ることができないのかというと、実はほとんどの場合できる。というかできなきゃ困る。
特に電池と一体になって取り外すことのできないタブレット端末などの場合、電池だけ外して現地で手配してくださいなんてことも不可能なわけで、知らないこちらも悪いが窓口の担当者は勉強不足だったわけだ。
では、具体的にどうやって送るか。
結論から言うと、日本郵便のこのページを参考に、ラベルをプリントアウトして「種類」「包装基準」「連絡先電話番号」を記入の上荷物に貼り付けて窓口に出せばよい。
ところが、である。電話番号はともかくとして、「種類」「包装基準」についてどう判断すればよいのか、このページの記述だけではさっぱりである。
その親ページに「お知らせ」としてもう少し詳しい記載があるが、これでもまだ良くわからない。
そこで、自分の理解ついでに大雑把に解説してみることにする。
僕らが送ろうとする機器類(ノートPCやタブレット、スマホ、ビデオカメラ等)に搭載されているのはほとんどの場合、「リチウムイオン電池」と考えていい。電池パック単体が見られる機器の場合はパックの表面に「リチウムイオン電池」「Li-ion」「LiB」といった表記があるはずだが、無い場合は機器の仕様をWebやメーカー問い合わせで確認する必要がある。
次に「単電池」「組電池」の区別だが、これはセル数を示している。
かなり荒っぽい判断ではあるが、PCやビデオカメラ等の場合、電池の定格電圧が1.2~1.5V程度の場合は「単電池」、電圧がそれらの倍数(例えば2.4V~3V、3.6V~4.5V、4.8V~6Vあるいはそれ以上)の場合はまず組電池と判断して良い。(最近は薄型のリチウムポリマー電池など新手の電池も出てきているので断言はできないが)
次に電力量だが、これは電圧×電流で表すことができるので。電池に書かれているそれらの値から算出すれば良い。
手元にあるスマホのバッテリーには「3.8V 2100mAh」とあるので3.8×2.1=7.98Whということになる。もしWh標記がないときは計算した値をマジックで手書きするか、ラベルプリンターなどで電池パックに貼付する。(単電池の場合はWh表記は不要)
この時点で、単電池で20Wh以上、あるいは組電池で100Whを超える場合は航空輸送不可となる。
さて、ここまでクリアできたら、次は「種類」を判定しなくてはいけない。
電池単体で送る場合は「965」、機器から電池を取り外し、同じ梱包で送る場合は「966」、そして機器組み込みの状態、あるいは取り外し出来ない場合は「967」となる。(金属リチウム電池の場合は同じ条件で「968」「969」「970」となる)
で、それぞれの種類に合わせて包装基準は以下のようになる。この基準にそって梱包し、「包装基準」欄には先程の種類番号の頭に「PI」をつけて、例えば「PI966」などと書く。
梱包の条件は結構くどくど書かれているので簡単にまとめると、
- 10キロを超える重い梱包はNG(電池単体の場合)
- 電池にショートの危険があるような梱包はNG(水濡れなどの場合でも)
- 一梱包に三個以上の電池は送れない。
- 取り落とした時に電池に何らかのダメージが及ぶ梱包はNG
「965」及び「968」の場合
- 単電池及び組電池は完全に単電池又は組電池を閉じ込める内装容器に包装されなければならない。
- 単電池及び組電池は短絡(ショート)を防ぐよう保護されなくてはならない。これには短絡をもたらす可能性がある同一の容器内の伝導性物質との接触に対する保護も含まれる。
- 各包装物は1.2mからの落下試験をいかなる方向おこなっても以下のようなことが起きないものでなければならない。
その中に収納されている単電池又は組電池への損傷
組電池と組電池(又は単電池と単電池)とが接触するような内容物の移動
内容物の漏出 - 各包装物の総重量は10kg未満
- 単電池及び組電池は完全に単電池又は組電池を閉じ込める内装容器に包装されなければならない。
- 単電池及び組電池は短絡(ショート)を防ぐよう保護されなくてはならない。これには短絡をもたらす可能性がある同一の容器内の伝導性物質との接触に対する保護も含まれる。
- 各包装物は1.2mからの落下試験をいかなる方向おこなっても以下のようなことが起きないものでなければならない。
その中に収納されている単電池又は組電池への損傷
組電池と組電池(又は単電池と単電池)とが接触するような内容物の移動
内容物の漏出 - 各包装物内に入れることができる組電池の最大個数は機器を駆動するために必要な最小の個数に2個の予備を加えたものである。
- 機器は偶発的な起動を防ぐ効果的な手段を備えていなければならない。
- 単電池及び組電池は短絡(ショート)を防ぐよう保護されなくてはならない。
- 機器は組電池が収納されている機器により同等の保護が可能でなければ、容器の容量及び意図された使用方法に関わる十分な強度の適切な材料および設計により組み立てられた強固な外装容器内に包装されなければならない。
たぶん、今までは現場の判断で受け取っていたであろうこれらの荷物の受け入れは、今回の事故を受けて一層厳しくなることが予想される。
また、現時点での情報を元に書いているので、今後条件が変わる可能性があることを添えておく。