NWSの正体が僕の勝手な想像に近いとすると、実は材料工学的にあの硬さを超える金属を作り出すのはかなり困難ではないかと考える。もはや対決のレベルが生産現場の知恵が追いつかない高みまで来ているからだ。
それでもまあ、あえて考えるとすると、前回の記事で取り上げた炭化ケイ素を超える硬さを持つ素材として考えられるのは、「炭化ホウ素」である。
別名ブラックダイヤモンドとも呼ばれ、ファインセラミックの中で最高の硬度を誇る。軽いくせに猛烈に硬く変形しにくいありがたい素材だが、加工が他の素材よりも格段に難しく、これまで量産ベースの話は聞いたことがない。日本タングステンのWebサイトを見ても、炭化ケイ素配合製品までは取扱があるが、炭化ホウ素については(少なくともラインナップには)見当たらない。
ところが、最近になって独立行政法人産業総合研究所(美少女?ロボット「HRP-4C未夢」を製作した組織)が炭化ホウ素の新しい焼結技術を開発した事で状況が変わってきた。
日本タングステンがこの手法を用いているかどうかは不明だが、情報は持っているはずなので実験室レベルでは再現可能だろう。ほこ×たてで用いられている試験体くらいの大きさなら恐らく作れるのではないかと思う。
炭化ホウ素の硬度はHV=最大3500程度とされているので、炭化タングステンをベースにお馴染みの二ホウ化チタン、加えて炭化ホウ素を配合し焼結することでHV=2700程度の材料は作り出せるのではないだろうか?
また、単純に硬さを追うのでなければ、材料の構造に工夫する方法もある。
番組の中で日本タングステンのエンジニアが「ミルフィーユのように多層構造にしては?…」と話していたのが印象に残った。これはアニメ「エヴァンゲリオン」の中で第五使徒ラミエルの貫通攻撃に対しネルフが多層装甲板でこらえたよう(マニアックなたとえでゴメン)に、繰り返し現れる猛烈に硬い層でドリルの消耗を狙い、間にある粘りのある素材が硬い層を支えて材料全体が割れてしまうのを防ぐという方法だ。
これなら硬さと割れにくさの両方を高いレベルで追求できるが、一方で硬い層そのものの厚さは材料全体の半分以下になってしまう。単純な理屈では固い層の耐久力が全体を同じ硬さにした場合の倍近くないと不利になる。
もう一つは表面コーティングである。
NWSΩType2は表面をテカテカに磨くことで手がかりをなくし、ドリルが材料に噛み付くのをできるだけ遅らせるという工夫がしてあったが、これを一歩推し進めて、表面にきわめて微小なダイヤモンドをコーティングするという方法があるだろう。
ドリル側がダイヤモンドの超砥粒を超硬パイプに電着している十八番を奪う形だが目的が違う。
ドリル側は刃としてダイヤモンドを使うのに対して、もっとずっと粒度の小さなダイヤモンドで表面にきわめて平滑な硬い防御層として配置するわけだ。
最強(硬い)金属という名目からすると若干これじゃない感が漂う上にかなり裏技っぽいので九州男児(?)のニッタンでは採用されないかもしれないが、次のチャレンジャーがどんな飛び道具を備えてくるのか分からないので検討の余地はあろうと思う。
ともかく、テレビ的には半年後くらいの再戦が望まれるところだが、いずれにしても求められるレベルが高くなりすぎているので、一年くらいは待つ必要があるかも知れない。待ち遠しいことである。